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「さ、佐々木 貴です。」
黒ぶちのメガネをかけた彼はお見合いの最中、一度も目を合わせないんですよ。
私が頑張って合わそうとすると、上手い具合いに避けるんです。
それが可笑しくて可笑しくて。
「何ニヤけた顔してんの」
と母に二、三度つねられたほどでしたから。
隣町で大手の銀行に務めていた彼でしたが、営業マンとは思えないほど無口で。
親同士と私が喋るばかりで、彼はたまに動いたかと思えば額の汗を拭ってました。
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