『発端』

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湖の孤島に大きな聖堂が建てられていた。 尖塔群を模った厳かな石造建築は、まるでイギリスにあるカンタベリー大聖堂のような様式だ。 参道の橋は途中で途切れており、湖岸まで到達しない。 湖上で橋が途切れた場所に転送装置がありそこから直接転送される。 薄明の光があるいは暁光。 窓から斜陽が降り注ぐ、教会の中の世界。 かつてここには、女神アウローラを人族によって台座に末っていた。 祈りと供物の類ではない。呪文で戒めていた。 愚かな人の愚行な記憶の地――― Δ隠されし 禁断の 聖域―――グリーマ・レーヴ大聖堂 ロストグラウンドと呼ばれる、それらが発掘されたエリアの一つ。 その大聖堂の中に一人のPCがいた。 赤い瞳をし髪は茶色で黒で構成された服の上に赤い鎖が幾つか付いている黒いジャケット、腰の所にも所々に鎖がついている。 彼のPC名は、レイン――――。 彼の目の前には祭壇が置かれていた。 そこには、まるで前々から何かを縛り付けていた物が突然その呪縛から脱したように八本に断たれた鎖が散乱していた。 そして台座の側面には強い力によってつけられたような赤いA型の傷跡<サイン>が刻まれている。 初めからあった訳ではない。 その傷跡は、昔ある有名なPKがつけたと言われている。 それ以外は、比較的普通の聖堂様式となんら変わりはなく、並べられた多くの横長い椅子と祭壇、そして日が差し込む大型の窓ぐらいしかない。
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