アカネ色の出会い

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俺は空を見上げた。 春の訪れに相応しい柔らかな日差しに、思わず一瞬目を瞑る。 4月の風が透き通るような蒼さの空を吹き抜けて、桜の薫りを街中に運んでいる。 それは俺みたいなちっぽけな存在にも例外なく届けられ、鼻先を優しくくすぐっていく。 そんな春風を心地良く感じながら、俺は少し街外れにある桜ヶ丘高校の校門に立っていた。 今日は入学式。 そう。 今日から俺は高校生になるんだ。 ……まぁ、別にどうでもいいんだけどさ。 学校なんて大して楽しくねーからな。 そもそも学生の本業であるはずの勉強が大嫌いだ。 それにどうやら俺には少し協調性が欠けているらしい。 友達は多くない。いや、正直なところ少ない。 部活なんてもちろんやってない。 ハッキリ言ってだるい。 放課後は大体、数少ない友達とゲーセン通いか、麻雀やるか、煙草を吸いながら学校生活への不平不満を言い合うか…… 人並みの青春の鮮やかさとはかけ離れた、煙色の灰春。 ただ、それは中学校時代の話。 そんな仲間たちとも学校が別になって、今日からは新たな生活が幕を開ける。 ひょっとしたら多少の変化くらいはあるかもしれない。
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