眠いんだよ、俺は

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…なんか口に入った。 ぺっと吐き出せば細かく切った消しゴムだった。顔を上げれば通路挟んで隣の大親友山本武がこっちを見て笑ってるじゃないか。 ひでぇ、こいつひでぇ。 綱吉はハデに顔をしかめた。 人が気持ちよく間抜け面を晒して惰眠を貪っているというのに、口に消しゴム投げ入れるなんて。鬼だ、鬼だあいつ。しかも爽やかに笑ってる。なんも楽しくねぇよ!! 「なに、なんなの、俺なんかした」 いやぁー、と人差し指で頬を掻いた。 「気持ち良く寝てるの見ると邪魔したくなんじゃん?」 ふざけんなー!!叫びたい、叫んでしまいたい。でも今は授業中である。綱吉は衝動をぐっと抑え込んだ。 「あとさぁ、可愛くて、つい?」 「可愛いって…お俺、おっ男だよ!?」 可愛いとつい口ん中に消しゴム放り込むのかお前は。と、不幸にも山本の後ろの席の武田君は思った。 「関係ねぇよ、可愛いもんは可愛いのー」 「そんな…無茶な」 どうしたダメツナ、お前のアイデンティティーのツッコミはどこいった。と、不幸にも綱吉の後ろの席の木村くんは思った。 ダメツナは、綱吉は照れてうつむいているではないか。 だってあの山本なのだ。みんなのヒーローで、自分のヒーローで親友で、憧れてた。その相手に誉められたら(内容は忘れている)そりゃあ照れる。 でもディーノさんや雲雀さんに言われたらもっと照れるなぁ。 綱吉はそういう子だった。 再び遅いくる睡魔と赤い顔を隠すためにまた突っ伏した綱吉と、それをにこにこと見つめる山本。 勘弁してくれ、と武田君と木村君は思った。いちゃいちゃすんなら余所でやれ。 それもあるが、殺気、殺気が背後やら隣やら、普段は明るく元気で可愛らしい女子の皆さんから発されている。その中でも一際凄いのが斜め前方から。ギリギリと拳を握り締める音が聞こえている。 そんな空気もなんのその、我が道を行く男、山本はツナに話しかけた。
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