タケルくんの場合

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よだれ垂らしそうになるくらい妄想しながら教室に行ったら、席が前の方しか空いてなかった。 ちっ。 出遅れたか。みんな朝から来るのはえーな、おい。 仕方なくあたしは前の方の席に座る。やっべ。黒板近すぎ。授業うける気マンマンみたいじゃんか。 「さおりっ!」 呼ばれて後ろを見たら、手招きしながらあたしを呼ぶ女がいる。めぐだっ! のろのろと、後ろの方を陣取るめぐんとこに向かう。 おっ。 めぐの横、席空いてんじゃん! 「おはよー!さおりのために席とっておいたよー!」 「うぬ。失敬。感謝する。」 めぐはニコニコしながら、あたしの予約席の上に置いた自分の鞄を持ち上げながら席を譲ってくれた。 なんていい奴なんだ。 「さおり、なんかいいことあった?」 「お!めぐさん分かりますか?」 「だって朝の割りに機嫌よさそうだもん。」 いつも朝は無愛想みたいな言い方だな。コノヤロ。ま、席取っといてくれたから、そこは許す。 「タケルンとさっき、ばったり会ったんだなー、これが。」 「まぢでっ!…って、えっとー、タケルンって誰だっけ?こないだの髪短い人?」 「そいつは1週間前に終わったんだよねー。ほら、あの福山雅治みたいな顔の。」 「あーっ!!!あのイケメン先輩かぁ!いいなぁ~!」 ふっ。そりゃ、いいに決まってんだろ。めぐレベルの女じゃあ、そうそう仲良くなれねーレベルを突っ走るイケ様だからな。 あたしくらいのレベルじゃなきゃ無理なレベルだな。ふっ。
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