タケルくんの場合

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夜の7時50分。 今、あたしは洋民の前にちょこんと待っている。 あたしは丹念に丹念にメイクをしてきた。いつもの3倍の時間をかけたんだ。男を落とす時は、そんくらい丹精こめなきゃなんねーわけよ。 あーゆーあんだーすたーんど? 服装はタケルンがカジュアルやから、あたしもそれに合わせてみた。なんでも着こなすあたし、まぢ最高。万事快調だぜ。 …いや、違うな。あの後、めぐのシャーペンがおもっきし顎に刺さって、あたしの顎には今、赤黒いホクロのようなもんが出来てしまった。 コンシーラーも微妙な効果しか発揮しなかったし。使えねーなぁ。 おっ!タケルンが来た! いやーん、超かっこいいんですけどー!なんかオーラ出てるぅ~。 街を歩く女どもがタケルンを目で追っているぜ。 ふっ。見たいだけ見とけよ、てめえら。 だって、タケルンは今からあたしのもんになっちゃうんですから~ぁ!いいだろ、いいだろ~へろへろ~! 「ごめん、待った?」 「ううん!全然ですよぉ~。」 ハイ!嘘です!実は30分前から来ちゃってました~! あたしってば、乙女だなー。 …って、ん? 「どうしたんですか?タケルさん、あたしの顔になんかついてますか?」 タケルンは、じーっとあたしの顔を見つめて固まったのだ。 「っあ!顎のこのホクロですかぁ?えへっ。ちょっと怪我しちゃったんですぅ。」 「…あ、いや、うん。そうなんだ。てゆうか、さおりちゃんってホントお洒落だよね。いつ見ても可愛いし。」 「ええー、そんなこと無いですよぉ!タケルさんお洒落だから隣にいるの、恥ずかしいですもぉん!」 上目遣いで、照れてみせる。コレ、いわゆる萌えポインツ! まぁ、お洒落なのは当然だよ。月にナンボ服に金かけてると思ってんだよ。 「じゃ、入ろっか。俺、すげー腹減ってるし。」 「さおりもー!」 お腹も恋心もペコペコでぇす!みたいな? ん?別にうまいこと言えてないって?うっせ!
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