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本気で怒ってる訳ではないのはすぐ分かったが、それでも口を尖らせてそっぽを向く雛は大学生になったとは思えない程幼く見えた。
“大学生になったら彼氏と電車通学をする”のが雛の数ある夢のひとつだったらしい。
僕はよく雛の夢を壊して怒られる。
夢と呼ぶにはあまりに些細な物を雛はとても大きな夢が壊されたかの様にショックを受ける。
「夢だったのに」
っと語気を強めて言う雛の、そっぽを向いたままの顔をこちらに向かせ、
「ごめんな」
っと罪悪感のかけらもこもっていない謝罪の言葉を唇に乗せて彼女の唇に返した。
僕達は何も変わらず恋していく。
違う。
僕は分かってた。
少しずつ変わっていく僕達の関係に気付かないフリをしていただけだった。
今になって思えばきっと雛も…。
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