ツユハナビ

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和哉と落ち合い、花火をする予定の河川敷へ向かった。雛達はすでに来ており口先だけの謝罪をしながら合流した。 雨は今の所降ってはいない。ただ花火の最中に降るのは確実なくらいの空色をしていた。 「ぢゃあ始めよっか」 っと雛の隣にいる女が口火を切って早速花火に火を灯した。  僕にとって、いや恐らく僕達にとって今年初めての花火の炎は、梅雨ならではの湿気のせいか朧気で儚い火花を散らした。 その後も、損にも得にもならないような話をしながら無くなるかも不安な程大量にある花火(実際湿気て火が着かない物もかなりあったが)を始末していると、案の定雨が落ちてきた。 それが合図かのように 「あっちに行こ?」 と雛が僕を誘った。雛の視線の先に和哉と楽しそうに喋る女がいたので、僕はある程度の花火を手に取り高架下から雨の中に身体を忍ばせた。 いつから雨の中で遊ばなくなったのだろう。今よりもずっと子供の頃は雨は特別な遊び道具の様に心を踊らせたのに。そんな風に下らない事を考えてると、 「きれい」 っと雛は独り言とも取れる小さな声で呟き、両手に花火を持ち楽しそうに踊っていた。 雨の中で不器用に舞う雛は花火によって照らされて、なんだかとても綺麗に見えた。
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