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それでも気持ちには答えられないのだから仕方のないことなのだが…でも、罪悪感を感じて傷ついていると思った。
それは憶測。
でもきっと当たっていると思う。
自分が一度だけ接した彼女は、確かにそんな人物だった。
一度、一度だけだが俺は彼女と話した事があった。
ほんの少しの時間だったが、柔らかな雰囲気に包まれていて、優しい子だなと感じ取れた。
その時の事はしっかりと覚えている。
だからこそあの時すぐに名前が出てきたのかもしれない。
そんな自分の考えに苦笑しながら、もう一度溜め息を吐いた。
そんな彼女に嘘の『告白』なんかしていいのだろうか。
自分は『嘘の告白』で、振られてしまったら傷つくこともなく終わる。
だけど彼女は振ってしまった事に傷つく。
何も関係のない彼女が俺の勝手で傷つくなんて……そんなこと、あっていいはずがない。
でも、圭志たちに本当の事を言うわけにもいかない俺は、告白を止められない。
―ピピピピピピピピ―
そんな堂々巡りをしていた考えを遮るように目覚まし時計の音が鳴った。
6時30分に設定している目覚ましを、腕を伸ばして上のボタンを押して止める。
いつもこの時間に目覚ましを設定しているが、一度もこの時間に起きた事などなかった。
俺はその音を合図にして勢いよく起き上がり、今まで入っていた布団から出た。
謝ろう。
圭志たちが告白を見届けて帰った後…どうにか時間を作ってもらって謝ろう。
彼女だけにはきちんと事情を話して。
きっと軽蔑されてしまうだろうけど、自分の精一杯の誠意を見せよう。
そう決意して、俺は制服に着替えた。
こころなし、いつもより制服をきちっと着て。
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