嘘の『告白』

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がちゃっと言う音とともに兄さんが現れる。 そしてまた俺の顔を見て一言。 「俺より早いなんて…どうしたんだよ、晃臥?」 …やっぱり。 ――――――― ――――― 「もう出るの?」 「うん!!」 靴を履きながら母さんの問いに答える。 靴を履き終わると俺は地面を踏みしめるように立つ。 今日はいつもの日常とは違う。 自分勝手な想いで、彼女を傷つける。 そしてその罪は『告白』しなければならない。 彼女にどう、思われても。 「行ってきます。」 その言葉と同時に扉を開く。 自分の決意を胸に刻んで。 朝の爽やかな風は俺の頬を撫でていく。 しかしその爽やかな風も季節が夏に近づくと生温さを持つ。 そんな爽やかで少し生温い風を受けながら空へと顔を向けた。 青い空は雲一つなく晴れ渡っている。 自分の気持ちとは違って…。 でも、もう溜め息なんてつかない。 自分が招いた事で、何も関係のない彼女を傷つけようとしているのだから。
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