始まりのバツゲーム

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「あ、い、いな、い、…よ。」 だが絞り出した声はあまりにもたどたどしく、否定の言葉は肯定の言葉へとなった。 「え? いるんだ、好きな人。」 「うわ、嘘、初耳。」 いないという言葉は完全に無視されていた。 しかしまた否定しても、もう照れているだけだと思われてしまうだろう。 俺がしくじったと顔を歪めた時、怪しく不敵に笑う声が耳に届いた。 「ふっふっふ…。 晃臥、お前の事なんてお見通しなんだよ。 どうせ恥ずかしいとかそんな事思って、いないって答えてスルーしようとしたろ? てか、最初悠馬が言った時固まった時点でバレバレだし。」 難儀な性格してんなぁ、と肩を圭志に叩かれ、俺はガクッと肩を落とした。 「ま、まじ、かよ…。」 そうやって俺が自分の性格に落ち込んでいると、一番恐れていた質問が実奈の口から発せられた。 「ね、それで晃臥の好きな人って誰なの?」 ピタリ、と音が鳴るのではないかという勢いで俺の思考も、動きも停止する。 そんな晃臥を純粋な好奇心から見つめている実奈の目は心なしかキラキラと輝いているように見えた。 そんな実奈を見返しながら、自分の心臓を落ち着かせようとゆっくりと息を吐いた。 しかし、そんなことは実奈が見つめている時点で無意味な努力だった。
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