始まりのバツゲーム

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まだその事は顔には出ていないらしく、誰も何も言ってはこない。 俺が好きなのは…実奈だ。 でもその事を誰にも言えない理由がいくつかあった。 まず一番に…実奈には彼氏がいる。 そしてその彼氏は… 「ほら、晃臥、実奈が聞いてんだから早く答えろよ。」 「そんなに急かさなくていいよ、圭志。 晃臥恥ずかしがってるんだからゆっくりいこうよ。」 「まぁ、実奈がそう言うなら…。」 …圭志だ。 圭志は親友だし、実奈とも小1の頃から仲がいい。 そんな奴らに波風みたいなのは立てたくないし、気を遣わせるのも嫌だ。 それに… 「…なぁ晃臥。 俺らはバツゲームから始まった事だけど、でも晃臥に好きな人がいるんなら全力で協力するぜ? 親友だし、それに俺と実奈をくっつけてくれたんだからな。」 ニカッと爽やかな笑顔で、そう泣けるような事を言ってくれる。 圭志の言う通り、俺は二人をくっつけるのに協力をした。 だから言えないし、言うつもりもない。 親友だからこそ協力を頼まれた時に言うべきだったのだろう。 でも言えなかった。 いや、言える事なんてその時は何も無かった。 だって俺は、実奈への気持ちに気付いてなどいなかったのだから。
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