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長い長い時間をかけて、私は多くの知識を身につけてきた。
私の知識が力となって、この世界の平和を守っていることを、疑う者はいないだろう。
民は笑顔を絶やすことなく、私を尊敬してくれる。
だが、賢者と呼ばれている私にも、わからないことがある。
人の心の奥深くには、かならず闇が眠っている。どんなに純粋な者の心にも。
たったひとかけらの闇が、ふとしたきっかけで大きくふくらみ――やがて心のすべてを闇に染めてしまった例を、私は何度となく見てきた。
闇。心の闇。
どこから来て、どこへ行くのか。
この小さな世界を治める者のつとめとして、どうしても知っておかねばなるまい。
闇にとらわれた者どもが、この世界の平和を乱す前に・・・。
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