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げんなりとしていた一刀ではあるが、書簡を運びに来た女官の話に、とりあえずはこの場にあるので全部だと教えられた。
とりあえず、という言葉が気になったが、一先ずはホッとした。これ以上増やされては堪らない、そうなれば確実に缶詰状態は決定になる。
その不安を感じると同時に、一刀は別の事を思いついた。これで全部なら、暫くの間は誰も来ないんじゃないか、と。
そうなれば、やることは一つしかない。
「よし、行こう」
自分しかいない部屋で呟く。そう、また抜け出し城下へ降りようとしているのだ。
以前と同じところから変装道具を取り出し、褥の上に軽く放る。そして上着のボタンを上から外し、これもまた褥の上に放った。
手早く上下を着替えると、フランチェスカの制服を隠す。それから髪型を変えようと鏡の前に立つのだが、一刀はあることを思い出した。
「そういえば、っと……」
再び隠し場所に戻り、手を入れ探る。そして掴んだそれ取り出し鏡の前に戻った。彼は手に持つそれを見て軽く笑うと、徐に……被った。
「おー、まるで別人だな」
鏡に写る自分の姿を見て、また笑う。一刀の短かめだった髪は、突然として結べる程に長くなった。そう、彼が着けたのはエクステ、というかカツラだ。
今度はどこから手に入れたのか、綺麗な黒色の毛髪。
どうやら以前星にあっさりばれたのが案外悔しかったらしく、考えた末に行き着いた策がこれのようだ。
因みに、服装も前回と微妙に変わっている。
髪型も少し変えたし、服も違う。これなら見つかっても絶対にバレない。
よしっ、と意気込み鏡から離れる。そして――。
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