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突然かけられた声に体を竦ませ、恐る恐る振り返る。
そこに居たのは、昇り龍を称する突貫娘の趙子龍だった。因みに、真名は星。
右手には大事そうに小壷を抱えてるのだが、中身については言うまでもない。
「これまた、珍妙な格好を」
「珍妙って……」
確かに一刀の普段着を考えれば、今の格好は珍妙と言えなくもない。見慣れない人からすれば、彼の普段着である制服の方が珍妙であるが。
「髪型まで変えておられるが、それは何かの遊びですかな?」
言葉こそ不思議がってはいるものの、星は察しのよい少女だ。確実に一刀の行動理由に勘付いているだろう。事実、口が笑っている。
一刀がそれを指摘すると、星は大して気にした様子もなく「これは失敬」と謝った。
「それにしても星、良く俺だって分かったな」
割と上手く変装したつもりなんだけど、と言葉を継ぐ。自分の服装を見回しながら言う一刀に、星はニヤリと笑った。
「何を仰るか主よ。その程度の変装でこの趙子龍を謀ろうとは、まだまだ甘い」
「この程度って、お前が言うか……」
そう言おうと思ったのだが、口には出さず留めておいた。蝶で顔を隠すよりはよっぽど変装してると思うぞ、とも。
「それこそ、あの華蝶仮面のように見事な変装でなければ」
だから何でそれがバレなくて、これがバレるんだよ。絶対におかしいだろ。と思ったが、これもまた一刀は言わずにそのまま飲み込んだ。
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