chapter1

2/5
前へ
/218ページ
次へ
いつもの朝。   いつもの匂い。   そして、柔らかな香り。   もうこの家に住んで5年になるが未だこの洗濯の匂いには慣れきれずにいた。   誰よりも早く起きてニュースを見る習慣は、ここの家に引き取られてからも変わらなかった。   『MC圧倒です!日本軍の勝利も間違い無いでしょう』   女性アナウンサーが晴々しく顔を輝かせながら言った。   今日も、どこのチャンネルのニュースでも、どの新聞の一面も、三次対戦のことを取り上げている。   これじゃまるで、戦争を肯定してるみたいじゃないか。軍の子を肯定してるみたいじゃないか。   …いや   肯定してるんだ。   戦争を行っている張本国だというのに、日本にはこれっぽちの戦火も無い。   それが国民達の戦争に対する意識を“恐怖”から“楽”に変えてしまったのだ。   戦場で何が起こっているのか、知る者は軍のやつらだけだ。   国民はただ勝利報告を受け、喜ぶだけ。   そして…
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4654人が本棚に入れています
本棚に追加