16人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほらよ」
目の前に突然、缶が現れる
缶コーヒー。
「あぁ…」
僕はよそよそしく それを受け取った
受け取る手の力が弱かったためか
ケンは苦く笑うと
「ちゃんと持てよ」と言って隣に座った
右手に持たれた缶コーヒーは熱く
僕の冷たい手を暖めた。
「 最後 」
ぽつり、ぽつりと零すように
渇いた咽から声を出せば
言葉は掠れ風に消えてしまいそうになる。
それでも伝えておきたかった
彼の 最後の 瞬間。
「俺の名前を呼んだんや…」
荒れ狂う赤黒い血の中で
彼は僕を必死に叫んだ
真っ赤に染まった右手を
目一杯振り上げて
その瞳は憎悪に狂って見えた
最初のコメントを投稿しよう!