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その日、いつものようにゴミ溜めみたいな部屋でノートパソコンに向かって書いては消し書いては消しと全く進まないままの第三作と格闘していると担当編集から呼び出しがかかった。
ついに催促か、と三十分程電車に揺られて、いつも打ち合わせに使っているファミレスへと向かう。
どういった理由なのか二重になったドアを通り抜けると、適度に席の埋まったファミレスの奥、喫煙席に座っていた担当編集がこちらに向けて軽く手を振った。俺はやたら暖色にこだわっている店内を歩きながら、次々に言い訳を考える。今ちょうどアイディアが。まだカタチにはなっていないのですが……。ええ、ばっちりです。三ヶ月後にはちゃんと原稿が……。しかし彼はプロである。こんな新人作家の嘘なんてあっさりと見破ってしまうのだろう。だったらもう諦めてまだ何もできていないと頭を下げて一緒に考えてもらおうじゃないか、と方針を決めたところで席についた。
「どうも」
「おはよう」
そんな挨拶と、いくつかの世間話をした後、彼はなんだか申し訳なさそうな顔をした後、意を決したようにこう言った。
「Null魔湯くん、ケータイ小説かいてみてよ?(笑)」
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