蒼蟲

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蒼蟲

蓮華にしようか… 百合にしようか… 遠くで眺める私は蒼蟲 蓮華はツンと大人びて 媚びる事なく愛らしい 百合はまだ蕾で 大人なろうと背伸びするもまた愛らしい 蓮華にしようか… 百合にしようか… 蜘蛛の巣に絡まる私は蒼蟲 薔薇を思うのはとうの昔 刺された棘がまだ痛む 牡丹を選ぶつもりは花からなかった そうなかったのだ 蓮華にしようか… 百合にしようか… 何も望まない事を望む私は蒼蟲 おどけた蜜蜂が百合と蓮華を行き来する アゲハ蝶は薔薇がお好みだ 牡丹の語りかけなど聞きもしない 気まぐれ熊蜂は素通りしてゆく 百合の袂には蛹か繭か まだ在りし日を思い いつか羽を広げ舞うのだろう 蓮華にしようか… 百合にしようか… 選びはしない私は蒼蟲 囚われた蒼蟲には何も出来ない 例えゆくとて葉を食み花を枯らすが末だ どうやら蜘蛛のお出ましだ 安らかに安らかに 百合と蓮華は蜜蜂に任せ 空を知らずに私は蒼蟲 ゆく
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