0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
それは、端から見なくとも異様な光景だった。
「・・・はぁぁぁぁ・・・・・・」
燎は額に手をあてて先ほどよりもずっと深いため息をつくと、とりあえず背負っていたソフトケースを降ろした。
そこに居たのは、リボンとレースの付いたパフスリーブの黒いブラウスに、フリフリを形容詞したような白いエプロン、ペチコートでボリュームアップさせた膝上丈のひらひらミニスカートに、腰まであるストレートの黒髪には白いヘッドドレスが標準装備の・・・、
紛うことなきメイドさん。
「オレの家で何やってんの?」
満面の笑みで手を差し出してきたメイドさんに仕方なく鞄を渡すと、燎は冷めた目で言った。
膝立ちをしていたせいで黒いタイツに畳のカスが付いてしまっているのをまったく気にせず、鞄を部屋の隅に置いて戻ってきたメイドさんは、ポップ調のフォントがお似合いのトーンで答える。
「お忙しいご主人様に、喜んでいただこうと思っ・・・ゴフッ!!」
予めセリフを考えてきたとしか思えないメイドさんの言葉を遮って、燎は容赦なくその腹に膝蹴りを入れた。
せっかくのコスチュームを台なしにしかねない醜い声をあげて、メイドさんが後ろに倒れ込む。
と同時に、長い黒髪がヘッドドレスごとふっ飛んだ。
よく隠せたと感心したくなるような、緩いウェーブのかかった金髪のショートボブが現れる。
「うぅ・・・。リョウくん、ひどーい」
なんとか起き上がって言うメイドさんの足元に、燎はヒールで音を立てて一歩踏みこんだ。
「もう一度聞く・・・」
静かにそう言って顔を近付けると、見下ろすようにして叫んだ。
「オレん家勝手に上がり込んで何やってやがる、この変態オカマ野郎ッ!!!!」
最初のコメントを投稿しよう!