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「ほっとけ」
燎は静かに押し入れの襖を閉めると、それだけ言い残して洗面所の扉を開ける。
「なあ、燎・・・」
後ろ手で閉めようとしたその時、日成がふいに呼び止めた。
「何?」
扉から覗き込むようにして顔を出すと、体を起こした日成は燎を真っ直ぐに見つめて言った。
「・・・好きやで」
あまりにも不安げなその表情に、燎は笑いがこみあげてくるのをどうにかごまかした。
「ハイハイ、いつもの告白ありがとう・・・」
「『いつもの』って、そんな軽いモンちゃうわ!」
そんな燎の様子には全く気付かず、日成は叫んだ。
「俺はちゃんと真剣やから! 本気で言うてるからな!!」
顔を真っ赤にして声を荒げる彼の姿に、燎は堪えきれずクスッと笑った。
「知ってるよ。
・・・もし覗いたら、その格好の写真事務所に送り付けるから、覚悟しとき」
今日初めて燎が笑ったのを見て一瞬口を綻ばせた日成だったが、その言葉の意味を理解したとたん顔色が真っ青になる。
「いやや、そんなの! みんなに笑い者にされる前に、雷3つ落ちるわ!!」
悪戯が成功した子供のようにニヤリと笑った燎は、日成の心からの悲鳴を背に扉を閉めた。
To be continued...
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