『当選おめでとうさん』

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   その男は。  腕を組み、校舎の壁に張り付いた非常階段に、軽くもたれるようにして立っていた。  細身の黒いサングラス。  黒い生地に銀釦のステン・カラーのロングコートを肩掛けにし、同系のインナーを纏い。  磨きあげた革のブーツも黒。  その闇色の装いに映える、夕陽のように鮮やかな紅の髪。  そして、170センチのあたしが見上げるほどの長身。  何処か冷めた、そう、 “COOL”を絵に描いたような印象。  これだけ存在感ありありだのに、あたしは、声をかけられるまで、気配を全く感じなかった。  
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