序章~キオク~

2/3
202人が本棚に入れています
本棚に追加
/501ページ
人は忘れる。 行動、知識、感情さえも。 人は忘れることのできる生き物である。 それはときに人を救い。 人を苦しめる。 たとえ忘れることを望まなくても、人は"忘れ"てしまうのだ。 だが。 忘れることは、なくなってしまうということではない。 そこから消えてなくなるということではない。 ただ思いだせないだけなのだ。 毎日増加するキオクに埋もれ、ただそれを見失っているだけ。 どんなに時間がたっても。 どんなにキオクが増えても。 そこに"存在"したという事実は変わりはしない。 キオクがあるということは。 そこに確かに"生きていた"という証拠。 忘れることもまた、生きているという証。 だから。 精一杯生きればいい。 忘れることを恐れず、ただ前を向いて。 それがたとえ困難な道だったとしても。 なにかを、失う道だったとしても。 忘れることない、キオクなのだから。 人は。 生きるために、生まれてきたのだ。
/501ページ

最初のコメントを投稿しよう!