夢の始まり

2/11
202人が本棚に入れています
本棚に追加
/501ページ
天気がよかった。 かんかんと照りつける太陽。 光を反射して、鮮やかな青を咲かせる噴水。 公園には親子、友人、恋人たちが集い、今日の天気を楽しむ。 休日。 週に一度のその日は、楽しめとばかりに天気が応援していた。 これだけ太陽が輝いているにも関わらず、季節のせいで、気温は意外と低い。 子供にとっては、外ではしゃぐにはちょうどいいだろう。 そんな、春の初め。 雪はとけ、街中にはところどころに緑が見え始めた。 「う~…」 その街中を。 一人の男性が歩く。 黒のジャケットは彼のすらりとした体型を映えさせる。 耳にはピアス、指には高価な指輪。 片手でタバコに火をつける仕草は、異性ならばふっと目にとめてしまうだろう。 そんな、バッチリ決めた彼の唯一の欠点は。 「なんで日曜に仕事せなあかんのや…」 ぶつぶつとつぶやきながら歩いていることだった。 たまにすれ違う人が、びくりとして一歩離れる。 が、彼は全く気がついていなかった。 それほどまでに。 「…くっそ」 彼はいらついていた。 今日は日曜。 本来なら家でゆっくりしていたはずなのに。 「ぜぇーんぶ、あいつのせいや…!!」 なにかを思い出したのか、眉をひそめながら、 「なんで自分の仕事すんのに人巻き添えにすんねん」 不機嫌につぶやいた。 …すれ違った人が怪訝な顔で遠のいていったことは、眼中にはない。 「ムカつく」 はぁーと煙をはいて。 彼は2本目のタバコに火をつけた。
/501ページ

最初のコメントを投稿しよう!