夢の始まり

3/11

202人が本棚に入れています
本棚に追加
/501ページ
白い煙が空へのぼっていく。 それを眺めながら、彼はまた息をついた。 「だる…」 今は仕事の休憩中。 空気を吸いに、こうしてコンビニまで行っていた。 ついでにタバコを買って、コーヒーを買って… 「……」 なにげに、手にしたビニールの袋を見た。 タバコと。 2本のコーヒー。 (ま…あいつだって、休みなんに頑張ってんやし) なんだかんだ言いながら、もう一人分のコーヒーも買ってやった。 あつあつのホットコーヒー。 さすがにまだ肌寒いため、体を温めるにはちょうどよいだろう。 早く戻って渡してやろう。 そう思い、歩を早めた。 …数分して、彼はいつもの事務所へたどり着く。 休日だということで、人気はあまりない。 たまたまいた人に挨拶をし、自分の仕事場へと向かう。 コーヒーはまだ温かかった。 それを確認して。 かちゃ、とノブを回した。 「ただいまー…」 中には、今日一緒に仕事をしていた仲間が、一人でがんばっているはず。 コーヒーを渡して、少し息抜きさせてやろう。 …そう考えながら。 部屋へと入った。 そこで。 「……」 彼は入り口に足を踏み入れたまま、立ち尽くした。 それは… 「…にゃろ…」 ぴくぴくと頬をひきつらせて。 彼…かぁゆは、持っていたビニール袋を、ぐしゃりとにぎりしめた。
/501ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加