夢の始まり

5/11

202人が本棚に入れています
本棚に追加
/501ページ
ソファーの空いているところ… うつ伏せで寝ている、やすの足元に腰かける。 反動でバネがぎしりと音をたてた。 が、その振動でも彼は起きる様子を見せない。 (まったく…) 背もたれに寄りかかり、またため息をつく。 今日中に終わらせなければならない仕事はまだ残っているのに。 これではいつ終わることやら。 が、無理やり起こすのも気が引けるし… (…だからといって、一人でやるのは勘弁やで) どうしたものか。 とりあえず、タバコでも吸おうと、一本くわえる。 ライターを取り出して… 「…うにゅ」 「?」 聞こえたうめき声に、ライターに火を灯したまま、静止した。 声が聞こえたほうを見やる。 …と。 「うーにゅ…」 思いきり腕を前に… …うつ伏せのため、頭の上にだが。 伸ばして、起き上がろうとする仲間の姿。 「……」 「…起きたんか」 「……あれ」 起き上がり、彼はソファーの上にちょこんと座る。 ちょうど、かぁゆの隣。 肩にふれそうな場所に、彼の後ろ頭があった。 「ほら、起きろ」 「あぅ」 ぽすんと頭に手をおいた。 わしゃわしゃと髪をいじられながら。 やすは寝ぼけ眼でこちらを振り向いた。 「あれ…俺、寝てた?」 「おう」 「どれくらい?」 「さぁな。俺が帰ってきたときには、すでに」 「…あ~、やってもた」 ぐしゃぐしゃと自分の頭をかきむしる。 寝てしまったことを悔しがるということは、寝るつもりはなかったのか。 「そんなに時間たってないで、気にすんな」 「…うー」 「ほれ、コーヒー」 「あちっ」 缶をほおにあてる。 寝起きでびっくりしたのと缶の熱さで、やすは小さく悲鳴をあげた。
/501ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加