夢の始まり

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「それ飲んだら続きやるで」 「さんきゅ」 渡されたコーヒーを、やすは素直に受け取った。 ぷしゅ、と封を切る。 ソファーに座り直し、一口飲んだ。 「……」 「眠そうやな」 「うー…」 まだ目が開かないのか、彼は缶を片手に持ったまま、もう片方の手でしきりに目をこすっていた。 「…あー!! あかんあかん!!」 大声をだして、やすはコーヒーを一気に飲み干し、元気よく立ち上がる。 「よっし、やるで!!」 「張り切りすぎて倒れるなよ」 「ったり前や、誰に言うとるん?」 「はいはい」 苦笑した。 今からがんばれば、夕方には帰れるだろう。 そう思い、かぁゆもソファーから立ち上がる。 「じゃああとは休憩なしで」 「へーい」 そして。 2人は仕事を再開した。 そのとき俺は… まだ気がついていなかった。 これから起こること… あいつの様子が少しおかしいことに気がついていれば。 予測できたかもしれない。 埋もれてしまった、記憶を掘り返すことが、できたかもしれない。 でも、まだ俺は。 "それ"を忘れたままだった。 「……」 「…大丈夫か?」 仕事に取りかかってから1時間ほど。 いまだ眠そうに目をこするやすに、かぁゆは尋ねた。
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