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病室
海辺で石橋さんに出会ってから2週間が過ぎようとしていた。
私は,その日,早く仕事が終わったので,石橋さんに会いに行く事にした。
《会いに行ってはいけない》
そんな気持ちなんて,もうなかった。
今思えば,石橋さんの命が,あとわずかである事を,私自身どこかで感じ取っていたのかもしれない。
病院の一階の総合窓口で,石橋さんの病室を教えてもらった。
石橋さんの病室は,二階の一番奥の個室だった。
ドアは開いたままで,
「こんにちは…」
私が病室を覗くと,とても優しそうなおばさんと,ベッドを起こして座っている石橋さんがいた。
『お~!来てくれたん?』
石橋さんが笑顔で言うと,隣に立っていたおばさんが微笑んで
『こんにちは,木村と申します。』
と言った。
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