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その日から,私は3日に1回くらいのペースで,石橋さんのお見舞いに行った。
木村さんとも,仲良くなって,3人で笑い合ったりした。
そんなある日の事,木村さんが帰った後,2人でテレビを見ていた。
「そろそろ私も帰らなきゃ…」
『あぁ。。。』
「それじゃぁ…」
『待って。』
石橋さんが,細い指で私の服の裾をつかんだ。
「何?あ…窓,閉めよっか?」
窓から入る風が,病室のカーテンを揺らした。
『死ぬまででえぇねん…俺が死ぬまで…愛してくれへんか?』
聞き取れるか…取れないかぐらいの,小さな声だった。
それから,石橋さんの,精一杯の力で,ゆっくり私を引きよせて…
石橋さんは,私のおでこにキスをした。
私はとっさに,石橋さんの体を引き離して病室を出た…
8月が終わろうとしていた日の,出来事だった。
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