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わたしは四葉さんの身体に回した両腕に少しだけ力を込めてみた。
匂いが更にわたしの中へ染み込んで行く。
それから、あともう少しだけ力を込めて四葉さんを抱き締めた。
この人はどうしようもない人だ。
どうしようもなく無防備だ。
それでいて真っ直ぐで、不器用で、傷ついてもその傷が癒えるのを待たずに、また次の難易度の高い壁へ突進して行ってしまう。
ずっとここにいてくれれば傷つかずにいられるのに。
けれど、わたしでは四葉さんの本当に欲しい物はあげられない。
幸せなんてものは、信じるとか、信じないとか、そんな定義の中になどないことをわたしは知っている。
裏切ったり、裏切られたり、そんなものの中に不幸せがあるわけじゃない。
そのどちらにも行き着けない場所に、動き出せない場所にあることをわたしは知っている。
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