水と油

6/16
前へ
/842ページ
次へ
コイツの口から出たのは、にわかには信じられない話だった… 約150年先から来ただと? 作り話にしちゃ、飛躍しすぎだ。 本人も、なぜそうなったかは分からないと言う。 郷里は、俺や源さんと同じらしい。 懐かしい多摩の地に関しては、驚くほど詳しい。 土方は困惑のあまり、二の句が継げないでいた。 「わたしはねッ!」 突然、顔を真っ赤に染めて、眞子が興奮気味に口を開いた。 「ブライダルホールをデザインして、そこで好きな人と結婚式を挙げて、可愛い子どもに囲まれて、郊外に一戸建てを買って、幸せに暮らすのが夢だったの!」 膝に置いた拳を握りしめたまま、息も継がずに一気にまくしたてた。 「なのに…」 なんなのよ…?と、大きくため息をついて、肩を落とす。 その瞳には、涙が浮かんでいた。
/842ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9367人が本棚に入れています
本棚に追加