水と油

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再び薄暗い部屋に戻されて、外から閂を下ろす音だけが冷たく響いた。 怖いくらいの静寂。 (何で、こんな罪人みたいな扱いを受けなきゃいけないの?わたし、何かした?夏休みに京都を旅行してるだけじゃん!) 悔しさともどかしさと孤独感から、思わず涙があふれてくる。 ボーナスはまだ使いきってないし、予約しておいたDVDの発売日も迫ってる。 こんなところで、時代劇ごっこにふけっている場合じゃない! 涙が乾いて少し落ち着くと、今度はふつふつと怒りがこみ上げてきた。 (あの鬼め…) 冷たい刺すような目が脳裏に浮かんだが、頭にくるからかき消した。 「土方の馬鹿~~~!鬼~~~ッ!」 思わず?…いや、心から叫ぶ。 …と。 引き戸が開いて、まさしく名に恥じぬ形相の「鬼」が立っていた。
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