水と油

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…そこへ再び。 「土方さん、なに泣かせてるんですか?」 総司が顔を覗かせた。 先ほどまでの笑顔は消え、目には非難の色が浮かんでいる。 「知らん。俺が泣かせたわけじゃねぇぞ!」 「眞子ちゃん、本当?」 疑わしそうな眼差しを土方に向けてから、眞子の顔を覗きこむ。 「…この人に、襲われかけました」 「はぁぁ?お、お前、何言ってやがる!」 「土方さん…花街の女の生き霊に呪われて、女にされちゃいますよ」 取り乱し、必死に弁解する土方に。 じりじりと迫る沖田。 「クスッ」 ふたりのやりとり――言ってしまえば土方の慌てぶり――を見て、思わず吹き出してしまった。 無敵に見えた彼にも、どうやら弱点はあるらしい。 「泣いたり笑ったり、忙しいね」 と、いたずらっぽく笑う総司。 「馬鹿女、覚えとけよ」 と、苦虫を噛み潰して、飲み込んでしまったような表情の土方。 あらぬ疑いをかけられた哀れな鬼は、不機嫌にその場を立ち去った。
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