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自室に戻り煙草をふかしながら、土方は、あるときめきに似た胸の高ぶりを覚えた。
が、次の瞬間、キッパリとかき消す。
「土方さん、入りますよ」
「おう」
珍しく真剣な面持ちで、総司が襖を開け、傍らに座った。
気心知り尽くした間柄である。
腕を枕に寝そべったまま、顔だけ総司の方に向けて、
「どした?」
と、土方は穏やかに先を促す。
「眞子を、わたしの部屋に移したいと思ってるんですけど」
ちょっとそこまでおつかいに、くらいの気軽さで総司は言う。
「…なッ?おい!総司!」
突然の申し出に、さすがの土方も慌てて起きあがった。
「構わないでしょう?わたしが責任を持ちます」
「しかし…」
「近藤さんには了解を得ましたよ」
「うっ…」
そう言われては、返す言葉も反対する理由もない。
腕は新撰組随一、品行方正、近藤からの信頼も厚い。
なにより総司の口調に、静かだが、反論を許さない強い意志を感じたのだ。
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