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晴れてその存在を認められた眞子は、翌朝、まだ夜も明けきらないうちから、さっそく朝食準備に追われる。
厨房では、先輩女中の菊乃が、てんてこ舞い。
「菊乃さん、お味噌汁できました!」
「じゃ、干物焼いてちょうだいな」
「はい~っ!」
このふたり、今朝顔を合わせたばかりなのに、なぜか姉妹のように息はぴったり。
与えられた絣の着物姿も、なかなか様になっている。
どっからどう見ても、水戸〇門に出てくる、おとっつぁん思いの町娘。
広間に隊士たちが集まってくる様子を眺めながら…
(なんとゆ~騒がしさ!そして、まだ朝だというのに、この汗臭さ!)
こんな時は、自分のこの嗅覚が恨めしい。
(こういうのをむさ苦しいって言うんだろーなぁ…)
ボーッとそんなことを考えていると、向こうから土方がやってきた。
脳がけたたましく警報を鳴らし、眞子は素早く身構える。
通りすぎざま、わざわざ前かがみで彼女を覗きこみ、
「馬鹿女!菊乃の足引っ張るなよ!」
いたずらっぽい、少年じみた表情をその目に宿らせて、小馬鹿にするように言った。
「何をぉ~ッ?」
眞子はキッとふり返って、悠然と遠ざかる背中に中指を立てた。
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