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食事の準備が整えば、息つく間もなく、次はスピード勝負の配膳。
「湯気もご馳走」が口癖だという菊乃にせかされ、広間に足を踏みいれたら。
(うっわぁ…)
隊士たちの好奇の視線が、一斉にふり注ぎ、絡みつく。
すかさず、土方が口を開いた。
「今日から菊乃と一緒に、雑用係として働いてもらうことになった」
ちらっと彼女に視線を移し、挨拶しろと、そっけなく命じる。
「今日からお世話になります、水谷眞子と申します。どうぞよろしく」
三つ指ついて、深々と頭を下げると、一瞬の不気味な静寂のあと。
「ひゅ~♪可愛い!」
「俺専属の女中になって~!」
「ギャハハハ!」
あちこちから、とてもしらふとは思えない陽気な声が上がる。
戸惑いながらも、浮かれまくりの隊士たちに配膳を済ませ、厨に戻ると、喉を鳴らして水を飲んだ。
水って、こんなに美味しかったっけ?
今さらすぎる感想に、眞子は苦笑した。
片付けを終えた頃には、朝の鮮やかな光も、ただの熱へと変貌している。
早い話が汗だくだ。
シャワーを浴びたい。
ものすごく。
こうして、慌ただしい1日が始まるのであった。
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