渡る世間に鬼はない?

4/8
前へ
/842ページ
次へ
後片付けを終えると、次は洗濯だ。 全自動洗濯機に放りっぱなしの21世紀では考えられないことだが、当然、一枚一枚手洗いである。 しかも、課された衣類は、さながら雄大にそびえ立つチョモランマ。 (ヤバい…泣きそ…) 「眞~子」 ふいに声をかけられて振り向くと、弾けるような笑顔の総司がいた。 「総司!…あれ?お稽古はいいの?」 道場では、剣術の稽古の真っ最中。 かけ声と共にぶつかり合う竹刀音、床を蹴る音が聞こえ、飛び散る汗のにおいが漂ってくる。 「あ…えぇ、まあ。 それより、大丈夫?今日中に終わるの、これ?」 人の心配はいいから…と言いたげに、山のような洗濯物を指さした。 「どーだろう」 困ったように、小さくため息をもらしてみたけど、なぜか自然に笑みがこぼれた。
/842ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9367人が本棚に入れています
本棚に追加