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目が回るほど慌ただしい1日が終わった。
「ふぁ…」
うさぎ小屋――この女中に与えられた納戸の別名――で仰向けになり、ぐ~っと身体を伸ばす。
こんなに働いたのは、生まれて初めて。
今日は仕事を覚えるのに必死で、あれこれ考えずに済んだ。
…けど、これから、どぅ…なって…どぅ…やって………
などと思いつつ、2分後には、深い寝息を立てていた。
巡察を終え、井戸端で体を拭ってから自室に戻った総司。
足どりは軽やかだ。
「眞子!甘いもの好きぃ?」
隣の部屋に声をかけるが、返事がない。
そっと襖を開けると…
「………」
いつの間にやら体勢は横向きに変わり、無防備この上ない眞子の寝姿が、総司の視線を奪う。
着物の裾からは、太ももがあらわになり、白いうなじが悩ましい。
う~ん…
総司は、痒くもない頭をポリポリ掻いて、何かを考えていたが、すっと近づくと、その唇に唇をそっとあてた。
――ん。温かい。
何か、とても安心する。
忘れかけていた感覚。
心地よい浮遊感の中をさ迷っていた眞子が、静かに目を開けた。
「はっ…寝ちゃった?わたし…」
起きあがり、着物を正して襖を開ける。
「あ、目が覚めた?疲れたんでしょ。無理は禁物だよ」
刀の手入れをしていた総司が一瞬だけ手を止めて、柔らかい笑みをたたえて言った。
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