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「前が確認できなくなるほど積み上げんじゃねーよ、馬鹿」
ぶっきらぼうに言うと、彼は素早く散らばった衣類を拾い上げ、たらいごとひょいと抱えて、軽々と洗濯場まで運んでゆく。
「あの…」
一瞬何が起きたのか、状況がのみこめなかった眞子は、慌てて土方の後を小走りで追いかけた。
「あらァ、土方さん…」
その姿に、菊乃も信じられない…という表情で、呆気にとられている。
「あの…ありがとうございます」
さっさと立ち去るその背中に、眞子は小さく投げかけた。
聞こえてるのか聞こえてないのかわからないけど、土方は、ふり向きもしないで遠ざかってゆく。
わけわかんない…
ポツリと呟いたが、なんだかくすぐったいような、不思議な想いに、心がかき乱されるのを感じた。
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