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月明かりに照らされた眞子の綺麗な横顔に、思わず見とれていた自分に気づいてハッとする。
痒くもない頭を、ガシガシ掻いた。
「これ、ありがとう。似合いますか?」
真新しい薄橙の浴衣を羽織り、髪を高い位置で巻き上げた彼女は、なんだか儚げで。
「…俺に聞くなよ」
動揺を悟られないよう、ややそっけなく応える自分は、滑稽で。
夜風にあたりながら、土方にはめずらしく、よくしゃべった。
静かに聞き入っていたと思うと、目を丸くして驚いたり、屈託なく笑ったり、口をへの字に結んで怒ったり。
くるくる変わるその表情。
一緒にいると楽しい…と、彼は思った。
反応が、いちいち面白いのだ。
それでいて、控えめで、どことなく品があった。
奔放さと上品さを、うまい具合に持ち合わせている。
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