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あの頃、慕われんのはうれしかったけど気恥ずかしさとかもあって時々邪魔だなとか思ってた。
その時もせっかくの滅多にない遊び日和にそいつつれて友達の前には行けないって思った。
それがいけなかったんだ。
俺達がいたのは整備されてない川の土手だった。
ぬかるんでたんだ。
いきなりあいつの悲鳴が聞こえて振り返ったら姿がなくて、慌てて戻った。
そしたらあいつが何かを追って川へ滑り落ちるのが見えて俺も必死で飛びこんだ。
川は台風の影響で水かさも増して流れも早くて……
―――――――――――――――
「俺はあいつを助けられなかった。駆け付けた救助の人に俺だけ助けられた。捜索は3日続いて、結局、遺体は、あがらなかった。」
「傷はその時…?」
「ああ、あいつ目掛けて泳ぐ途中にでかい流木が当たって…でもあいつの苦しみに比べればこんなのなんでもないんだ。あの時一緒にいてやれば……。あの夢はきっと今でも俺に助けを求めてるんだ。」
「そんな!―」
「俺は!!…俺は今でも夢に見るんだよ。濁流の中を俺に向かって差し出される白いあいつの手を。そこに必死で泳いでいく夢を。でもいつも届かない。届かないんだ。」
俺は天使の前で泣いた。
あの時の自分の弱さを不甲斐なさを声を殺して泣いた。
人の、誰かの前で泣くなんていつ以来だろう。
するとそっと顔を覆う手に天使の手が重なった。
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