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濁流が身体の自由を奪う。
流れてきた流木が額をかすり、流れる血で前が見えない。
細く白い手が波間から見え隠れしながら遠ざかる。
(待ってくれ!!今助けるから!)
叫ぶ声は水の流れる音で掻き消される。
服が水を吸って重くなり、それでも諦めず手を伸ばした。
届くかと思った刹那、白い手が沈む。
(うあああぁぁぁああ!!)
―――――――――――――――
はっと目を覚ますと女が心配そうにこちらを覗きこんでいた。
その顔を見て昨夜何があったかを思い出し大きく息を吐く。
頭を持ち上げようとして鈍い痛みに思わず呻き、諦めた。
二日酔いだ。
それでなくてもいろいろありすぎて頭が痛い。
「この傷…」
天使が額の傷痕を見つけその細い指先でなぞる。
3㎝くらいの傷痕を不思議そうに見つめてくる。
あの夢を見たせいかもう痛まないはずの傷が疼いて自然と手がそこに行く。
「気になるか?」
天使はコクンとうなずく。
そのあどけない仕種に少し笑って俺は話し始めた。
もうその存在に疑問を持つのはやめた。
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