散らばる予兆

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 とあるところから大量の悪魔の種子が麻帆良学園になだれ込んでいる頃、ネギは職員室で久々の教師としての仕事をちょうど終えた所であった。 「んん~っと。これで終わりっと」  かなり長い時間を座って仕事をしていたがために固まってしまった筋肉を、背筋を伸ばしたり腰を曲げながらほぐしていく。 (最近は修行でずっと体を動かしっ放しだったけど、座りっぱなしってのも意外と疲れるなぁ) 「お、兄貴、終わったのかい?」  ポケットの名からひょっこり顔を出したのはオコジョ妖精のアルベール=カモミール。通称カモだった。 「うん。それじゃあ、片づけて師匠のところに行こっか」  そういって、さっきまで使っていたパソコンの電源ボタンに手を伸ばしたまさにその時、 「あ。メールだ」 「何かタイミング悪りぃな。どれどれ……」  カモが手慣れた手つきで新着メールが届くウインドウを開いた。するとそのタイトルには一万円当たりました!と書かれていた。  その全く身に覚えのない所からの、応募したこともない懸賞の当選メールにネギが目を丸くする。 「あれ?なんでこんなのが?」 「ああ、迷惑メールってやつだな……って兄貴、知らねぇのかい?」  そこまで言って、パソコン関係は自分がいつも教えているので、ネギにとって大概のことは初めてであるということに気がついた。 「これはな、何か人か気を引きそうなそれらしいタイトルや文面と使ってやる一種の悪徳商法や詐欺見てぇなもんだな。URLや電話番号が付いていて、そこに飛んだら怪しいサイトに行って法外な料金を請求されたり、うまいこと口車に乗せられてウン百万とかだまされたりするんだよ」  それなりにいい加減な説明をしながらカモはそのメールを開かずに完全に削除する。 「あ、いいの?何か添付されてたみたいだけど……」 「いいんだよ。あの手のメールは基本トラブルしかないからな。十中八九今のは宣伝ムービーだろ。開いた瞬間兄貴には刺激の強ぇ動画が流れるから気ぃ付けた方がいいぜ」  へへへ、と下品な笑みを浮かべる。 「まぁウィルスも無きにしもあらず、だ」 「へぇ~、そんなものがあるんだ」  感心したようにネギが呟く。カモも見知らぬアドレスや、怪しいタイトルだったらさっさと消しちまった方がいいぜ、と付け加えた。
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