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「…………おい」
「…………」
「おい起きろ」
「うわっ。生ハムが…………ハムが……な……な……な…………生ハムレモン!」
「貴様、起きろって」
「生……ハム……レモンがぁ……っぅあべしっっ!!」
「起きたな」
彼女のこぶしは今日も快調らしい。まさかこんな目覚まし機能があるとは……
「だから殴らなくてもいいだろ!……ってここどこだよ…………俺……確か電車から飛び降りて、地面に突っ込んで……」
そこには俺の街とは全く違う風景が並んでいた。例えるなら、ファンタジー映画のような、大草原が広がり渡り、遠くに村らしきものが見えていた。太陽の位置からして、もうすぐ昼になりそうだ。
「まぁ、それはあの村に着いてから説明する。さぁ、行くぞ」
「おい待てよ『ルル』」
とっさに声が出た。
「……貴様なぜ私の名を知ってる」
意外だったらしく、彼女はキョトンとしていた。
「いや……。電車の中でアイツが言っていたから……」
俺はその時の場面を思い返す。
「あと、『調査員』とか『能力者』とか……」
「ふむ、まあそれも後で説明しよう。まずは村に着いてからだ」
彼女は俺に背を向け歩き出した。
と思いきやまた振り返り、俺の方を見る。
「そういえば名前をまだきいてなかったな。名前は何だ」
「…………『藤田 冬人―フジタフユト―』だ」
俺は彼女を見ながら答えた。
「そうか、冬人か。さっきもいった通り私の名前は『ルル』だ。よろしくな」
そして彼女は左手を前に出した。
「…………何?」
「握手だ。知らないのか?」
なんだこれは。何かあるに違いない。今までのルルの態度からしてこれは罠ではないのか。
ここから想定できるパターンは3つ
パターン1 手を握ったとたん、そのまま引き寄せて右ストレート
パターン2 手を握ろうとして油断した時に右ストレート
パターン3 右ストレート
どれをとっても俺は殴られるらしい。
覚悟決めるしかねえな。
やるよ。俺はやるよ。
そして俺の右手が彼女の手に触れた。
だが、ルルは俺の考えとは違う行動を見せた。
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