#00 万引き少女としがない大学生

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その本をとったのは別に理由があったから訳ではない。ただなんとなくだ。 強いていうのならば、古本屋の隅っこに置いてあるその本がピンと目に付いた。それだけだ。 『AFTER WORLD END』 茶色いカバーを付けたその本は題名と著者の名前だけが刻まれていた。 『ジョニー・ライフル著』 本を開くと、真っ白なページしかない。 「おいおい、印刷ミスかよ」 そんなことをいいながらパラパラとページをめくると、文字があるページを見つけた。 『――のだと言い彼らはその指示に従った。 彼らは見つけた真実をどうするか話し合った。 消し去るべきだと言う者が少数いたが、その他のほとんどは利用を考えていた。 やがて言い争いが起きはじめ、闘いへと変わっていった。 直後彼らの目に――』 そこで文字は次のページへと進んでいた。 文字を読むためにページをめくる。 だが、そのページ以外に文字があるページはなかった。 「何だよこの本、ってか3500円て高いな」 大学2年生で1人暮らしをする俺にとっては、この値段は先1週間をもやしだけで過ごせばなんとか買える値段である。 …… やべ。想像したら怖くなってきた。 印刷ミス×ホコリまみれ×高額ぼったくりをしているこの本を誰が買うのだろうか。多分世のマダムを惑わす通信販売でも売れはしないだろう思う 奥さん、見て下さいこの本。何と特殊加工として 印 刷 ミ ス が施されています。わかりますか。 見て下さいこの真っ白なページを。本当に白でしょう。 どうですかこの本。今なら大量のホコリもサービスして、さんぜんごひゃ うん、無理だな。 そう考えてるうちに、辺りは暗くなってきており、店を出ることにした。 「明日また来てみるかな」 俺は何となくその本が気になりながらも店を出ることにした。 出口のドアを開くとすれ違いで俺と同じ年ぐらいの女性が入ってきた。 女性はさっきまで俺が歩いてきた道をまっすぐに進んでいく。 俺が完全に振り返ると、その女性はあの本を手にとろうとしていた。
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