81人が本棚に入れています
本棚に追加
「貴様が悪いんだぞ、私の肩に気安く触るから」
「いやいやおかしいだろ!何でそんな理由で殴られんの。肩に触れたら、右ストレートを放っていいのかよ!」
俺は痛めた頬を触りながら、立ち上がり、普通の人なら誰でもわかるような問いかけをした。
「もちろん」
あ。バカだコイツ。
「貴様はこの本が欲しいのか?それならやめておけ、貴様が持っても何の意味もない」
ドカンの上でリサイタルを開くどこかのガキ大将に並ぶ思考をもつ彼女はそう言うと、駅の方へと振り返った。
どうしようか。このままじゃ本とられるけど、俺には関係がないからな。
「その本、白いページしかないし、文字が書いてあるのは1ページだけだぜ」
その言葉を言って立ち去るつもりだった。
だが、
俺が言葉を言い終えると、彼女は体を素早く反転させこちらの方へとツカツカと歩いてきた。
「貴様今何と言った」
そんな怖い形相で睨まないで下さい。
「……いや、だからほとんどのページが真っ白だって……」
「違う。それじゃない」
そんな鋭い目で見ないで下さい。
「……初対面の人にいきなり右ストレートは止めたほ……ぶっふぉぃっ!!」
「殴るぞ貴様ぁ!」
もう殴ってますけど何か?
「……その本、1ページしか文字がかかれてなかったけど……」
「貴様文字が見えるのか?」
は?何を言ってるのだこの彼女は。俺がヨボヨボの老人にでも見えるのか。
そうでなくても俺は裸眼で両目とも2.1という微妙にすごい数字を持つ。なので大抵のものは見える。
「普通に見えるけど……」
「…………ちょっと私に付き合え」
少し考えた様子をした後、そう言いながら彼女は俺の前を歩いて行く。
「おい、待てよ。どこ行くんだよ」
「グダグダ言うな。早く付いてこい」
「だからどこなんだって」
俺の問いに、彼女は前を向いたまま答えた。
「未来だ」
最初のコメントを投稿しよう!