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緑スライムが伸ばしたつるは俺の体を彼女の場所へと運んでいった。
スライムもどきのくせになかなか頑丈である。力づくで離そうと思ったが文字通りビクともしない。
俺の体はつるによって持ち上げられ、彼女の少し上で宙づりとなっている。
「おいなんだよそいつ」
「この子は『リラ』と言う。形状を何にでも『変化』できる私の友達だ」
彼女がそう言い終えると、リラ。とかいう緑スライムに口と目が付いた謎の生物は俺を放し彼女のポケットへと戻っていった。
「状況が理解できないんだけど……」
「ふむ……まぁ言いたいことがあるだろうが、今は急ぐぞ」
そう言うと彼女は再度振り返り、駅の方へと歩いていこうとする。
その時……
「こっちだ!早く来い!」
大きな声が後ろの方から聞こえた。
「不味いな……貴様がグズグズとしてるせいで追いつかれたではないか」
大勢の足音が段々と近づく。
軽い地鳴りを起こす勢い。
振り向くとそこには……
「えぇぇぇぇぇ!!?」
俺が声が聞こえた方を振り向くと、黒スーツの男が100人ほど走ってきているのが見えた。
「何だよアイツら!」
「慌てるな、実際は一人だ」
「いや意味わかんねぇよ!」
「他の奴らは、先頭を走る奴の『幻覚』だろう」
理解が追いつかないまま俺は、彼女から向き直り先頭の男を見る。
…………
「アイツさっきの本屋にいたぞ!」
「つけられていたということだ。ここはマズい。仲間を呼ばれる前に早く行くぞ!」
そう言って彼女は走り出した。つられて俺も前に走り出す。
――ピリリリリリ
電車の発車時刻が近づく。
「マズいぞ貴様、早くしろ」
「いや、切符買わないと…………って改札口飛び越えんな!!」
彼女は素ん晴らしいジャンプで改札口を飛び越え、階段を上がっていった。
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