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「ちょっと君待ちなさい!」
駅員さんが彼女の後を追っていった。
まあ、大丈夫だろう。
続けて俺は普通に改札口を通り、階段を上がっていく。
振り向くと、ザ・黒服ズが入り口にたどり着き、一直線に進んできていた。
階段を上がる速度が早くなる。
「ちょっと君ら待ちなさい。切符も買わないで行くつもりか」
駅員さんグッジョブ。
「行きたいなら切符をかってか……ぶっほぉい!!」
ザ・黒服ズの1人は、駅員さんを殴り抜けた後押しのけて、改札口を通り始めていた。
もうちょい頑張れよ駅員さん。
そう考えながらも階段を上りきると俺は彼女を探した。
「おい。こっちだ」
彼女は発車寸前の電車の中に入っていた。そこから手招きをしている。
その電車の入り口に行く途中で右頬をはらして気絶してる駅員を見たが、これも彼女の言う『幻覚』だろう。
――閉まるドアにご注意下さい――
アナウンスを合図に電車は静かに走り出す。
「ふー。もう追ってこないよなアイツら」
気が抜けた俺はその場に座りこむ。
「いや…まだだ…。早く立て」
彼女は後ろの方を見ていた。
彼女の視線の先。つまり窓の向こうの車両にはさっき追いかけてきていた黒服が1人近づいてきていた。
「しつこいよ」
「あぁ…まったくだ。立て。行くぞ」
俺達は前の車両へと歩き出した。
「……ここから一番近い『ゲート』は……」
そう言いながら彼女はポケットから携帯のような機械を取り出し、それを素早くいじくり始める。
何でそんな大きいのがポケットに入んの?
気付くと俺達は一番前の車両に来ていた。
「もう行けないぞ」
彼女は黙って機械を見ている。
「そろそろ終わりにしようぜ」
低い声が後ろから聞こえる。
振り返るとさっきの黒服の男が1人立っていた。
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