#00 万引き少女としがない大学生

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「さぁその本を渡せ」 「何のことだ?」 「とぼけるな!『真実の紙片』を渡せと言ってるんだ!」 黒服の態度は依然と強く、気圧されそうなぐらいである。 「この世界に本があることはわかっていたが、どの本かはわからなかった。そしてやっと見つけたと思ったのに……」 そこで黒服の視線が俺の方に向けられる。 「お前が先に手にとっていたんだ!」 「だからといって貴様にやる義務はない」 「そうだそうだ」 「お前は黙ってろ!」 「……はい……」 「そこで様子を見ていると今度は調査員の『ルル』さんが現れやがった」 何が起こってるのかはわからないが、非常にマズいことが起こってるのは確かだ。 「この本を渡したからといって貴様には読めはしないだろう」 そう言いながら彼女は本をちらつかせる。 「それはそちらも同じ条件のはずだろ」 黒服は答える。 重い空気が流れた。 日はもう少しで落ちるところであり、車内を赤く染めている。 電車はもうすぐでトンネルに入るところである。 「さぁ早く本を渡せ。それとも『能力者』どうしで戦いたいのか?」 「それが望みなのか?」 電車は音をたてながトンネルの中へと入っていった。 同時に暗闇が辺りを覆う… 突如。 響き渡った金属が重なり合う音。 それは幾度も繰り返される。 何も見えない中俺はその場を動けなかった。 トンネルを抜けると…… 男は肩で息をしており、手には短刀が握られていた。 彼女はさっきと同じ場所に悠然と立ち、男を見据えている。 「貴様などに『能力』を使うまでもない」 「はぁ……はぁ……さすがは調査員だな………。だが、次の駅には既に仲間を呼んでいるぞ」 「20……19……18……」 ん?彼女は何を数えてるんだ? 「その中には、そっちの局長と肩を並べる『ディル』も来ている。もう観念するんだな」 「16……15……14……」 瞬間。 パリンッ!と 彼女は一番近い窓を拳で割った。 「なんだ。何をする気だ!」 「おい貴様」 「お、俺?」 「飛ぶぞ」 「…………はい?」 「飛ぶぞ」 「何言ってんの?」 「9……8……7……」 「いや言ってる意味が……」 「何を言う。至ってシンプルだ。飛ぶぞ」 「……」 「お前らごちゃごちゃと何言ってんだ。」 「3……2……1……」 「いやまだ心のじゅんびってうぉぉぉぉ!!」 俺は彼女に無理やり電車の外へと投げ出され、本日2度目の空を楽しんだ。
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