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(姉さん、恥ずかしいし迷惑だなぁ、はぁ……では! 他人を装い通過しますか)
利弥は心底怠そうに溜め息を一つ吐くと一歩ずつ門へと近づいていく……心底怠そうに……
桜が散り過ぎているせいで中々見通しが悪く、人の顔が判りづらいのは利弥にとっては幸いな事だった。
じゃ、みんな! 逝ってきますぜ! by 利弥
カサコソカサコソコソ……なんということでしょう。見事に利弥は【目立たず】【焦らず】【凡庸に】という【スルーの奥義】を発動し、あまつさえ図体のでかい男の横へ隠れることに成功した……大健闘
(よし! これで姉さんからは見えないな……これで登校初日から目立つことはないだろう。俺は平凡な学校生活を送りたいんだよ!
あぁ……この数分で俺、一人でキレてるよ……ヤバイなぁ)
利弥が一人で落ち込んでいる時、不意に横にいた男が利弥に声をかけてきた。
(……この学校には入学時の独特の緊張感ってのは存在しないのか……こんなに早く話かけられるなんて)
「おーい、聞いてるか?」
横にいた男が利弥の肩を掴む。
(あぁ返事忘れてたな)
「聞いてるよ! それより、誰?」
瞬間利弥はしまった!という顔をする……
(あっ! つい本音が……いきなり強気とか……)
「あぁ、すまんすまん。俺は2年の北見俊喜(キタミトシキ)だ。よろしく」
爽やかに挨拶し、爽やかに握手を求め、爽やかに名乗ったのは……2年、つまりは先輩。
(先輩かよ!!!! 思いっきりタメで話ちゃった……目ぇつけられたかな? でもいい人そう……かな?)
……かな?というのは多分見た目の問題だろう。爽やかだが見た目はかなりの長身にごつい筋肉。若干の強面までオプションで追加されている……
「えーと、公乃利弥です。よろしくお願いします……あの、何か用ですか?」
利弥は挨拶を返し握手にも応じる……これが今更だが礼儀というやつだ、今更
しかし北見という先輩は嫌な事でも思い出したのか身震いすると
「いや多分、俺とあそこにいる君の姉さん両方に関わることか……まぁ色々と話があるから式が終わったら【調査室】に来てくれ。じゃあ!」
その後は一瞬だった。一瞬で北見はいなくなり利弥は目を丸くするだけであった。
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